大竹昭子「私、写真を放棄することは、全く不可能です 中平卓馬の写真家覚悟」

カタリココ文庫の12冊目は、大竹昭子が著作『眼の狩人』(1994年)のなかの「記憶喪失を生きる神話の人」と「中平卓馬の沖縄撮影行」、および前掲書の増補版として出した『彼らが写真を手にした切実さを』(2011年)に収録した「中平卓馬の写真家覚悟」の三つの原稿に加筆し、再構成したもの。

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中平は1960年代、「写真家になる」と自ら宣言することで編集者から写真家に転向しました。カメラの扱い方や暗室作業を教えたのは彼と同世代の森山大道で、ふたりはブレボケ写真で既成の写真表現に異議を唱え、同人誌『プロヴォーク』でも活動を共にしましたが、1973年以降、中平はブレボケ写真を否定し、対象をはっきりと写しとる「植物図鑑のような写真」を提唱します。
その実践に踏み切ってまもなく、中平は記憶喪失と言語障害を患い、社会生活は困難になり、かつてのように先鋭的な言葉で写真を論ずることはできなくなりました。結果として、彼の写真活動はかつてないほど活発になり、2015年に77歳で他界するまで約40年にわたり、日々写真を撮ることのみに没頭したのです。

記憶喪失を患って以降、中平は大きな生の不安を抱えており、写真と関わることでその不安を乗り越え、生きるよすがにしたことは想像に難くありません。本号のタイトル『私、写真を放棄することは、全く不可能です』は彼の発言からとったものです。中平と写真の切実な関係を、そこに感じとっていただければさいわいです(大竹昭子)。
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中平との旅で著者が撮影した写真に加えて、中平自身による写真も数点、モノクロですが挟み込まれています。

A6、80ページ、ペーパーバック、モノクロ、2023年。

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